入居時の鍵交換はやらなければならないの?業界歴20年以上の宅建士がわかりやすくお伝えします☆

お気に入りのお部屋が見つかってワクワク気分で申込み!でも、「鍵交換代」として2万円以上の項目が…。払えない金額ではないけど、「本当に交換しなきゃいけないのかな?」なんて思ったことありませんか?
そんな疑問を持つ方のために、不動産業界歴20年以上の筆者が、「鍵交換代って必ず支払うものなの?」「交渉できる可能性はあるのか?」について、わかりやすく解説します!

目次

入居時の鍵交換とは

オーナーさんは、新しい入居者のために新品の鍵を用意したり、他のお部屋とローテーションしたりして対応することがあります。しかし、防犯性の低い鍵が用意されていたり、過去に他のお部屋で使用されていた鍵だと、セキュリティ面で不安を感じる方もいるでしょう。そこで、より高い防犯性能を求めて鍵を新品に交換するのが、「入居時の鍵交換」です。

鍵交換を請求されるケースは3つある

お部屋探しの際に鍵交換費用を請求される場合は以下の3つのケースが考えられます。

ケース1 オーナー契約条件の場合

お部屋のオーナーさんが、「契約するなら鍵交換が必要」と条件を設定している場合です。

例えば、前の入居者と同じ鍵を使用すると、前入居者やその関係者が無断で侵入するリスクがあり、トラブルにつながる可能性があります。そのため、これを防ぐ目的で契約条件として鍵交換を求めているケースがあります。

ケース2 不動産会社契約条件の場合

不動産会社が、「当社で契約するなら鍵交換が必要」と条件を設定している場合です。

現在、不動産会社はお部屋の紹介だけでは十分な収益を得にくい状況にあります。そのため、鍵交換をはじめとするさまざまなサービスをセットにして提供し、追加の収益源とする会社もあります。

ケース3 不動産会社のオプションの場合

不動産会社の商品として、鍵交換がオプションで提供されている場合です。

この場合、鍵交換はあくまで選択肢の一つであり、入居予定者が作業を希望した場合にのみ費用が発生します。強制ではなく、入居者が必要に応じて依頼するかどうかを決めることができるため、他のケースとは異なり、自由に選べるサービスです。

お部屋と鍵交換代をセットにすることは問題か

お部屋の契約と鍵交換作業をセットにして販売しているケースを紹介しましたが、そもそもお部屋の契約と鍵交換をセットにすることに法的な問題はあるのでしょうか。

「契約自由」が原則

(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

引用元|e−govポータル 法令検索より

お部屋の取引については民法の「契約自由の原則」が大前提となります。「契約内容は自由に決めていいよ」、「契約するかしないかは当事者が決めていいよ」というものです。

それを鍵交換に当てはめると、

  • オーナー → 鍵交換をしてくれる人に契約してほしいという自由
  • お部屋を探している人 → その条件で契約する・しない自由

があるということですね。

ガイドライン上ではオーナー負担が望ましいとされているが

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、トラブルを防ぐための基準が示されています。その中で鍵交換についても触れられており、「物件管理上、オーナー(貸主)が負担するのが望ましい」とされています。

しかし、このガイドラインの冒頭には次のような記載もあります。

民間賃貸住宅の賃貸借契約については、契約自由の原則により、民法、借地借家法等の法令の強行法
規に抵触しない限り有効であって、その内容について行政が規制することは適当ではない。

引用元|「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」本ガイドラインの位置づけより

つまり、ガイドラインは「契約時の取り決めがない場合の参考」として活用されるものであり、契約で明確に定められていれば、それが優先されるということです。

ネット上では「ガイドライン違反」「返金請求できる!」といった説明を見かけることもありますが、それは「契約で取り決めがなかった場合」に限られます。契約時に合意した内容を後から覆すことはできないので、注意が必要です。不安な点があれば、契約前にしっかり説明を聞き、納得した上で契約するようにしましょう!

「抱き合わせ販売」に該当すると独占禁止法違反

ただ、いくら契約は自由と言っても、完全に自由にしてしまうと借りる側が損をしてしまう可能性もありますよね。そこで、独占禁止法では「不公正な取引」を行った場合に罰則を設けています。その中の一つが「抱き合わせ販売」と呼ばれるもの。これは、メインの商品に必要のない商品を無理やりセットで売る方法を指します。

(抱き合わせ販売等)

10 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。

引用元|公正取引委員会 独占禁止法 不公正な取引方法より

この条文を見る限り、入居時に鍵交換をすることを条件にしたら抱き合わせ販売に該当する=違反だと思いますよね?ですが実際に違反となるにはこの「抱き合わせ販売」が「不当に」行われた場合に限られます。

ある商品を販売する際に,他の商品も同時に購入させる抱き合わせ販売は,取引の強制であり,不当に行われる場合には,不公正な取引方法(抱き合わせ販売)として禁止されています。

引用元|公正取引委員会 よくある質問コーナー(独占禁止法)より

実際に不当に当たるかという説明はケースバイケースで難しく、もしいまお困りの方は公正取引委員会や弁護士さんにご相談いただきたいのですが、この記事を書く際にいろいろな文献やサイトを拝見した上での私なりの解釈を一言でお伝えすると「大勢の人が困ってしまう」=不当と判断されるのではないかと思います。

入居時の鍵交換は違反なのか?

では前に説明したそれぞれのケースは独占禁止法に抵触するのでしょうか。様々なサイトで白黒分かれるところではありますが筆者の見解をお伝えします。

ケース①オーナーさんの契約条件の場合

これは抱き合わせ販売には該当するものの、そのお部屋への入居希望者でかつ鍵交換を希望しない人だけが困るので大勢とまでは言えないですし、似たようなお部屋もあり(全く替えがきかないわけではない)、契約条件として設定したオーナーさんのお部屋から入居希望者が減るだけで、望ましくはないですけど違反とまでは判断されないと思います。

ケース②不動産会社の契約条件の場合

例えばその不動産会社が大手でシェアがあるなどたくさんの方が利用する場合、その全員が鍵交換をしなければならないとなると大勢の利用者が困る可能性が有りますよね。またある程度シェアを持っている不動産会社が鍵のメーカーや施工会社を決めてしまうと、他の鍵のメーカーや施工業者なども困ってしまいます。鍵交換の必要のない他の不動産会社で契約するという選択肢もあるので絶対違反と言えるかは難しいところなのですが、違反となる可能性は残ります。

ケース③不動産会社のオプションの場合

鍵交換が選択できるオプション である以上、強制ではない=抱き合わせ販売には該当せず、違法ではありません。

ただし、残念ながら本当はオプションなのに、契約条件のように見せかける不動産会社も存在します。例えば、こんな言い回しをされることがあります。

  • 「オーナーさんが希望している」
  • 「みなさんにお願いしている」

こういう場合、実はオプションであることを明言せずに契約させようとしている可能性がある ので要注意です。

オーナーの契約条件かどうかを見分ける方法

ここで補足ですが、契約条件なのか単なるオプションなのか、曖昧な説明をされたら「鍵交換は契約条件ですか?」とシンプルに聞いてみましょう!「契約条件ではありません」と言われたら、不要なら外してもらうことが可能です。でも、「契約条件ですか?」って直接聞くのはちょっと怖い… という人もいますよね。そんなときは、次の方法を試してみてください!

  • お部屋の建物名をネット検索し、他の不動産会社の広告をチェックする。
  • 他社の広告に「鍵交換代」が載っているか確認する。

もし オーナーさんの契約条件なら、どの不動産会社でも鍵交換代が記載されているはずです。

逆に他社には書かれていない場合、 勇気を出して「これは契約条件ですか?」と質問してみましょう!どうしても聞きにくい場合は、そのお部屋を扱っている別の不動産会社に問い合わせて契約するのもアリです。

不動産会社を選ぶ自由は、あなたにあります!

鍵交換代は交渉できる?成功率を上げる4つのステップ!

違反じゃないならしょうがないよね…でもちょっと待って!

契約条件だからといって、鍵交換代を100%外せないわけではありません!ただし、やみくもに「外してほしい!」と頼んでも相手にされないことも。そこで、交渉が成功しやすい流れとタイミングをご紹介します!

STEP

気に入ったお部屋を内見する

まずは実際にお部屋を見て、「ここに住みたい!」と思える物件を探しましょう。

STEP

お部屋が気に入ったことを伝え、初期費用の見積もりをもらう

お部屋を気に入ったら、「初期費用の見積もりをください」と伝えましょう。不動産会社は「すぐ申し込みしましょう!」と言ってくるかもしれませんが、焦らずに費用の詳細をチェックすることが大切です!

STEP

総額を確認し、鍵交換費用を外せるなら申し込みたいと伝える

💡ここが交渉のポイント!

「鍵交換費用を外せるなら申し込みます!」と伝えてみましょう。重要なのは、「外せたら考えます」ではなく、「外せたら契約します!」と言うこと。この言い方なら、不動産会社にもオーナーさんにもメリットがあるので交渉が通りやすくなりますよ。

STEP

申し込みをする

交渉成立の可能性がある場合には、審査と同時並行で鍵交換を確認すると言われて、申込書の記入を促されると思いますので、記入をしましょう。あとは交渉の成功を祈るのみです!

交渉のベストタイミングは「申し込み時」!

「お部屋も気に入っているし、申し込みたい!」という気持ちを伝えた上で交渉すると、不動産会社側も前向きに対応してくれる可能性が高まります。

ただし、交渉が必ず成功するとは限りません!もし外せなかった場合、

  • そのままの条件で契約する
  • 申し込みをキャンセルして、別の物件を探す

どちらにするか、あらかじめ決めておくとスムーズです!

まとめ

鍵交換代は違法とは言えないが、交渉の余地はある!
「契約条件ですか?」と聞くことで、オプションかどうかを確認できる!
交渉のベストタイミングは申し込み時

オーナーさんにとっては、お部屋が空室になっている時間が長いほど 「家賃収入がゼロ」 という状態が続きます。なので鍵交換する・しないに関係なく、ちゃんと家賃を払ってくれる人なら入居してほしいと思うはず。実際、私も賃貸仲介を長くやっていますが、「鍵交換を契約条件にしてほしい」とオーナーさんから頼まれたことはほとんどありません。

鍵交換費用がかかるのは仕方ない…と諦めず、まずは確認&交渉してみましょう!納得のいく条件で、新しいお部屋に安心して入居してくださいね!

最後にエスホームでは

エスホームでは、法令違反とならないまでも望ましくない販売方法を避けるため、当社の管理する物件において、当社が主導で販売する商品については、火災保険を除くすべての商品をオプション制とし、その説明を徹底しています。また、火災保険に関しては加入は必須とさせていただいておりますが、当社の商品でなくても問題ないという方針を取っていますし、当社の商品をご利用いただく場合でも、お持ちの家財の量などをヒアリングして適切な保険金額にてご案内しております。(他社と比較してもお安いと思います)

一方でオーナーさんやその建物管理を行う不動産会社が設定している契約条件については、これを明確に説明し、広告においてもその内容をすべて記載するよう努めています。もちろん交渉につきましても窓口となり担当させていただきます。

千葉県浦安市で賃貸アパート・マンションをお探しなら、ぜひエスホームにお声がけ下さい!

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